北欧デンマークの海上に建つ風力発電機

風力発電の国、デンマーク

現在世界でも稀に見るエネルギー先進国として世界から注目を受けているデンマーク。
早くから国を挙げて政策に取り組んだ背景には、様々な歴史がありました。

アンデルセンの童話、美しい街並、デザイン家具、福祉先進国、そして世界で一番幸せな国。
私たちはデンマークに対してこんなイメージを持っているのではないでしょうか。実は、デンマークが世界に誇れるものの一つに、風力発電があることをご存知でしょうか。早い時期からデンマーク政府は風力発電の開発に力を入れており、驚くべきことに現在では国内の電気需要の20%を風力発電でまかなっているのです。

デンマークのエネルギー

オイルショックの影響をうけて

1973年の第一次オイルショックが起こるまで、デンマークの当時のエネルギー自給率はわずか2%でした。それまではほぼ90%以上を輸入の原油に頼っていましたが、原油価格の高騰に苦しんだ政府は1976年、新しいエネルギー計画を発表します。
それは、エネルギー源を多様化し、輸入への依存度を低減するための政策でした。その項目の中には、発電所で使う燃料を石油から他の燃料へ切り替えること、北海油田の開発、発電の余熱や天然ガス利用の給湯計画、省エネに対する補助金制度の導入、エネルギー税の導入などが加えられ、次々と進められていきました。
当初は原子力発電の導入も考慮されていましたが、1985年、公共エネルギー計画が採択され、デンマークは、原子力発電に依存しないことを決断しました。奇しくも翌1986年、チェルノブイリの原発事故が起こります。事故を受けて原発を排除したのではなく、国を挙げて研究した結果、原子力に頼らないという選択をしたこの国の政府と国民に先見の明があったのでしょう。

エネルギー自給率100%を超えて

こうした政策のもと、北海油田の開発により原油と天然ガスが豊富に産出され、国内の自給率は100%超、輸出も全輸出額の10%以上が原油を含めた鉱物資源で占めています。
そして1996年には、政府は電力会社に対し、大規模な風力発電の増設を要請しました。これにより、各電力会社は風力発電設備の建設計画を発表し、急激な発展と増加をしていくこととなります。

風力発電の歴史

風力発電に利用される風車の種類として、主に風の抗力(風が物を押す力)を利用したものと、風の揚力(風が物を押し上げる力)を利用したものがあります。前者はオランダの風車などでよく知られた方法、後者は飛行機が空に浮かぶ原理と同じで、現在の風力発電は揚力を利用したものが大部分を占めています。それは、揚力発電の方が羽を早く回すことができ、安定した電力を供給できるからです。
 風力発電は19世紀の末、ほぼ同じ時期にアメリカ、イギリス、フランス、デンマークで4人の研究者によって発明されました。そのうち、デンマークのP.ラクールは揚力利用の、現在でもみられる2〜3枚羽のシステムを発明しました。ラクールは国の補助金を得て、早速1891年に初めての風力発電装置を設置します。1900年初めには世界大戦の影響でデンマークは石油や石炭に頼る時期もありましたが、戦後ラクールの生徒であったヨハネス.ユールが再び風力発電の研究を始め、目覚ましい成果を上げたことで、風力発電事業は活性化していきました。そしてオイルショックを機に、国を挙げての政策に取り組むことになって行くのです。
現在は、デンマークの国土に6000基以上の大型風車が設置されています。もともと、「パンケーキの国」と表現されるように土地の高低差がなく、平坦なデンマークの国土は風力発電に向いていますが、近年は騒音問題や景観の問題から、風力の強い洋上への建設計画へとシフトしています。

北欧デンマーク、スカンジナビア航空の飛行機
デンマークの風力発電は、オランダの抗力式発電ではなく、飛行機が空に浮かぶ原理と同じ揚力を利用しています。
風力発電機の翼

風力発電は個人所有

実はデンマークの風力発電所は約半分近くを個人(協同組合)が所有しています。こうした協同組合所有の風力発電の先駆けとなったのが、ミドルグロン発電所です。この発電所は2000年に建設、コペンハーゲンから3.5km沖合のエーレスンド海峡にあります。稼働している20基のうち、10基が市民の協同組合、残りを民間企業が保有しているという共同運営が成り立っているのです。
住民や労働組合などが出資し合い、株を持つことは多くのメリットがあります。通常払わなければならない高い電気税や環境税が免除され、発電量が多ければ還元されることはもちろん、何よりも環境保全に投資し貢献しているという思いは住民にとって誇らしく、嬉しいものではないでしょうか。

再生可能エネルギーのこれから

このように、政府や電力会社だけでなく国民も事業に参加し、国全体でエネルギーについて考えていくという姿勢は、まさに環境先進国といえます。
さらにデンマーク政府は、国内の電気需要量のうち、風力発電の割合を2025年までに50%まで引き上げることが可能との見通しをたてています。風力発電は、再生可能エネルギーの中では採算性が高く、火力発電など通常電力には劣るものの、大規模導入が実現しているデンマークでは、このコストの問題も数年以内に解決できると専門家は見ています。
これからもエネルギー計画にのっとり、新たな再生可能エネルギーの可能性も見いだしながら、デンマークは風力発電を含めた環境分野で、ますます世界を牽引していく存在となっていくでしょう。

北欧デンマークの海岸線
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